2016/06/16

6月FOMC声明(2016年):年内2回利上げ予想維持もマーケットはハト派的と判断

6月14~15日開催分のFOMC声明が発表されました。
政策金利は0.25~0.5%に据え置きでした。

  • 経済状況はFF金利が緩やかな引き上げのみ正当化すると予想。
  • 金融政策のスタンスは引き続き緩和的。
  • FF金利の道筋は今後出てくる経済見通し次第。
  • 経済活動の成長が持ち直した一方、労働市場の改善ペースは減速した。
  • 経済活動は穏やかなペースで拡大し、労働市場の指標は強くなる見通し。
  • インフレ指標や世界経済、金融動向を注意深く見守り続ける。
  • エネルギーや輸入価格下落の一時的な影響がなくなり、労働市場がさらに強くなるにつれて、中期的には目標の2%まで上昇していくだろう。
  • 政策決定は全員一致。

  • 2016年末のFF金利見通し(中央値): 0.875%(前回0.875%)
  • 2017年末のFF金利見通し(中央値): 1.625%(前回1.875%)
  • 2018年末のFF金利見通し(中央値): 2.375%(前回3.000%)

  • 2016年GDP見通し: 1.9-2.0%(前回2.1-2.3%)
  • 2017年GDP見通し: 1.9-2.2%(前回2.0-2.3%)
  • 2018年GDP見通し: 1.8-2.1%(前回1.8-2.1%)

6月3日に発表された5月雇用統計が、非農業部門雇用者数の市場予想+16.0万人に対し+3.8万人という結果に終わり、衝撃的なネガティブサプライズとなったために、6月FOMCでの利上げ予想はほとんどありませんでした。市場予想通り政策金利は据え置きでした。

5月雇用統計前には4月FOMC議事録でも述べましたが、複数のFOMC関係者が6月FOMCでの利上げの可能性について言及し、利上げを織り込ませようという試みが見られました。しかし5月雇用統計後にはそうした動きもなくなり、6月FOMCでは、3月FOMCから利上げを主張してきた強硬なタカ派のジョージ・カンザスシティ連銀総裁でさえ政策金利据え置きに賛成し、全員一致で政策決定されたとのことで、いかに5月雇用統計のショックが大きかったかということがうかがえました。

5月雇用統計の非農業部門雇用者数の大幅鈍化を受けて、6月FOMCで発表されたFF金利見通し(中央値)は、2017年末が1.875%から1.625%へ、2018年末が3.000%から2.375%へ下方修正されました。また、GDP見通しでも、2016年が2.1-2.3%から1.9-2.0%へ、2017年が2.0-2.3%から1.9-2.2%へそれぞれ下方修正されました。2016年末のFF金利見通し(中央値)は前回から変更がなく、まだ年2回程度の利上げを想定していることになりますが、年内1回の利上げを予想する参加者が前回は1人だけだったのに対し、今回は6人に増加したとのことで、内容的にはハト派寄りになってきたようです。

非農業部門雇用者数が極端に悪い数字に終わった5月雇用統計をどう見ているかですが、「経済活動の成長が持ち直した一方、労働市場の改善ペースは減速した」と5月雇用統計の不調に言及する一方で、「経済活動は穏やかなペースで拡大し、労働市場の指標は強くなる見通し」とまだ強気の予想を崩してはいません。インフレについても、中期的には2%に達するという楽観的な見通しは変えていません。後述するイエレンFRB議長の会見で述べますが、1ヶ月だけのデータに過剰反応するべきでないというスタンスのようです。

5月雇用統計非農業部門雇用者数については、米通信会社ベライゾン・コミュニケーションズで約3万5100人が関わったストライキの影響があったということと、失業率が4.7%まで低下し、ほぼ完全雇用に近い状況になったために非農業部門雇用者数の伸びが鈍化したという見方があるようです。これについては、イエレンFRB議長も会見で述べています。


FOMC声明後に行われたイエレンFRB議長の記者会見の内容は次の通りです。

  • 最近の経済指標はまちまち。
  • 慎重な政策アプローチは適切。
  • 政策は予め決まっていない。
  • 1、2カ月の統計に過剰反応するべきではない。
  • 第2四半期の指標は著しい持ち直しを示すだろう。
  • 賃金の伸びにようやく加速の兆し。
  • Brexitについて討議した。
  • Brexitは政策決定のひとつの要因だった。
  • 毎回の会合で政策を調整する可能性がある。
  • FOMCの金利見通しは将来の政策に関する固定的な計画ではない。
  • 中立的金利は歴史的に見てかなり抑制されている。
  • 中立的金利がゼロ近辺との見方は多い。
  • 中立金利をめぐる動向は金融政策に非常に重要な影響を及ぼす。
  • 7月利上げは不可能ではない。
  • 適切と判断されれば数カ月以内に行動する可能性がある。
  • 経済が最大雇用に達するのに伴い、雇用の伸びは減速する見込み。
  • 政策の違いは為替レートに影響を及ぼす傾向。
  • 強いドルは米経済に下押し圧力をかけ得る。

前述のように、「1、2カ月の統計に過剰反応するべきではない」ということで、5月雇用統計だけのデータでは判断しないということのようです。逆に、「第2四半期の指標は著しい持ち直しを示すだろう」「賃金の伸びにようやく加速の兆し」とポジティブな見方もしており、一部のマーケット参加者にあった5月非農業部門雇用者数の鈍化は米景気が減速に向かうしるしという声とは違い、まだ楽観的な見通しを堅持しているということのようです。

前述したように「経済が最大雇用に達するのに伴い、雇用の伸びは減速する見込み」とあり、失業率が低下しほぼ完全雇用に近い状態になると、非農業部門雇用者数の伸びは減速するという可能性を述べています。

ただ、もう少し複数月のデータを見たいということと、23日に行われる英国の国民投票の事前予想がEU離脱派と残留派で拮抗していて影響が見極めきれないということで、6月のFOMCでは「慎重な政策アプローチは適切」となった模様です。

次の利上げ時期について、「7月利上げは不可能ではない」「適切と判断されれば数カ月以内に行動する可能性がある」と述べられており、5月非農業部門雇用者数の鈍化が一過性のものと確認されるかあるいは雇用のたるみが解消されたことが確認され、英国の国民投票の影響が落ち着けば、7月利上げもあるということのようです。この点は、FOMC関係者による6月FOMCでの利上げ織り込み発言が続いていた時の5月雇用統計前のイエレンFRB議長の発言を、7月を6月に置き換えれば同じことになり、6月FOMCは見送りましたが、見通しはそれほど変わっていないということになります。

一方、マーケットでは2017年末・2018年末の利上げ予想が下方修正されたことや、2016年・2017年GDP見通しが下方修正されたことを受けて、政策金利の引き上げはいっそう緩やかにならざるをえず、年内は9月あたりに1回がせいぜいだという予想が多くなったようです。

いずれにせよ、6月の雇用統計がどうなるかによって5月雇用統計の結果の解釈が変わってくる可能性があるので、今後の金利見通しの予想は6月雇用統計まで待つ必要がありそうです。